数日後、報告書受け渡しの為、依頼者が当社を訪れた。
その際、報告書と共に映像で一連の流れを説明するのだが、全く動揺することなく平然と聞き入る依頼者。我々探偵にとってはその方が報告しやすい。なぜなら、我々は普段の生活では知ることの出来ないありのままの真実を依頼者に報告する為、情に流された主観を含め、嘘の報告をする訳にはいかない。実際、報告しがたい事実も多々あるのだ。
しかし、不倫相手の子供を抱き店を出る旦那の姿が映し出されたところで、依頼者は突然涙を流し始めた。
その後、沈黙が訪れた面談室内では、依頼者のそばで何があったのか分からず 「 ママ。」 と母親を呼ぶ子供の声だけが響いていた。
そして、報告書受け渡しが完了した後、依頼者は 「 もっと、早くにお願いすればよかった。本当に有難うございました」 と晴々とした笑顔を見せ帰って行った。

本稿はよくある不倫調査の一例である。
そもそも、不倫とは 「配偶者を持つ個人と、配偶者以外が、肉体関係を伴う交際を持つ 」 ということなのだが、今回はどうだろう。 確かに肉体関係はあるもので2人は不倫関係にあると推測される。しかし、依頼者は不貞行為の有無で涙を流したのだろうか?それを理解した上で調査を依頼し、協力したのだろう。
浮気という言葉に対する価値観は人それぞれだが、私は一般的にいう肉体関係の有無が一番の浮気だという概念を払拭するべきだと思う。
彼女の涙にはもっと大きな意味があるはずである。

※ ノンフィクションですが、人物名は仮名です。
又、本稿は同じ悩みを持つ人の為にと、依頼者の多大なる理解のもと、許可を得て記載しております。

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